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村角千亜希流「灯りとの上手な付き合い方」

機能する照明から感じる灯りへ―“うつろい”の光を楽しむ時代に

 「ここ数年でインテリアや建築の雑誌が増えて、情報に触れる機会が増えていますよね。そこから、自分の家でもオシャレに灯りを楽しみたいという時代になったんだと思います」

 照明デザイナーの村角千亜希さんは、数々の照明器具を見渡しながら語ります。
「照明は『設備』だった時代から、ソファと同じように照明を選ぶ『家具』の時代になり、今ようやく優れた照明器具(ダウンスポット)と間接照明を合わせて空間の明かりを調える『テクニカルライティング』の時代になったんです。日本にはもともと幽玄で繊細な光の美学がありました。それが、戦後に蛍光灯が広く使われるようになって、常に明るい状態で生活するようになったんだと思います」

 村角さんは、日本人の光に対する考え方を、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を例に出しながら推察し、また国によって“灯りの文化”も様々だということを指摘してくれました。
「北欧などでは、ブルーモーメントと呼ばれる薄暮の時間にキャンドルを窓際に飾って楽しむという文化があります。一方、その薄暮の時間帯が短い日本は、光の変化・うつろいを楽しむ国だったんです。そのうつろう光に趣を感じる文化を、今の日本人にも家の中でも楽しんでほしいと思いますね」

 江戸時代は1回分のなたね油が米3俵分に値するほど、灯りが高級品だった日本。わずかな光の中で美しく映える「わびさび」のあるものを美しいと感じる心が、日本人のDNAの中に受け継がれていると村角さんは語ります。

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「北欧の“灯り”に心地よいものが多いのは、ブルーモーメントという自然界のすばらしい灯りが、誰にも刷り込まれているからかも」と村角さん

『GATTO』と『GATTO PICCOLO』(左)。
和紙に似た樹脂の淡い色合いが落ち着きを与えてくれる。
1960年に製品化されたが、これは2005年のニューモデル。

GATTO/2005製(¥68,250/税込) GATTO PICCOLO/2005製(¥47,250/税込)※ともにFLOS製


余白の美、光が生む景色を意識して心地いい灯りのあるリラックス空間を

大胆に壁そのものを灯りにしてしまう『ARIETTE』をバックに“心地よい灯りづくり”のヒントを授けてくださる村角さん。「壁だけじゃなく天井だってモチーフになる。天井からの灯りではなく、天井を照らす灯りでね」。

ARIETTE/1973製(¥40,950〜/税込)※サイズにより価格が異なる。FLOS製

村角さんのその場のひらめきで。「床置きの灯り『NOCE T』で植物を照らして生まれる“柔らかい灯り”で心地よさを楽しめますね」。
NOCE T/1972製(¥68,250/税込)※写真は黒、ホワイトもあり。FLOS製

 しかし現在の日本では、多くの人が蛍光灯の明るい光の中で過ごし、少しの暗さにも不満を感じています。ある調査では、世界の中で日本が一番明るいという結果も出ているそうです。
「部屋のどこでも新聞が読めるような、均一な明るさに慣れすぎているのかも。本当は、限られたところに機能的な明かりを配置して、どういう光が一番居心地がいいかを考えるだけで、だいぶ違ってくると思います」

 時間や目的によって光を調節し、使う照明器具を変えてみることでリラックスの度合いは大きく変化します。村角さんはもう一つ、重要な要素を教えてくれました。
「色温度(色味)を合わせるのも、明かりを整理するポイント。キッチンは蛍光灯の白い光、食卓はペンダントライトでオレンジ色の光と、色味の違うランプを使っている場合がありますよね。色温度でいうと、蛍光灯(白色)は4200K(ケルビン)、白熱電球は2800Kぐらいです。ここで蛍光灯に電球色(3000K)のものをチョイスするだけで、オレンジ色の光で統一された、落ち着いた雰囲気が得られると思います」

 そして、お金をかけなくても照明を変えるだけで雰囲気は大きく変わると語ります。
「大事なのが『余白の美』。モノが多くて雑然とした部屋でも、どこかに余白を作ってそこにきれいな光を当ててあげるんです。照明というものは、光だけではなく照らされるものを考えて、光と余白のバランスで景色をつくることが大事なんだと思います」

 
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